【徹底解説】自社開発とSIerとSESの違い。未経験が選ぶべきキャリアとは

「自社開発は華やかで自由」「SESは避けるべき」といった漠然としたイメージに囚われて、せっかくのチャンスを見逃してしまうのは非常にもったいないことです。
自社開発の自由なものづくり、SIerの大規模プロジェクト、SESの多彩な現場経験。どの業態にもあなたのキャリアを広げるポイントが隠れています。大切なのは、業態のイメージで選ぶことではなく、自分だけの戦略を持つこと。
未経験から理想のキャリアを掴むための最も確実で失敗しないアクションプランは以下の3ステップです。
- Step 1. 自分の「現在地」と「目的地」を定義する
- Step 2. 最適な「最初の扉」を戦略的に選ぶ
- Step 3. 「業態」ではなく「個社」を徹底的に見極める
「未経験からエンジニアを目指したいけれど、自社開発やSIer、SESといった言葉の違いがよく分からない…」「求人を見ても、どの会社が自分に合っているのか判断できない…」
「SESはブラックだからやめとけ」って言われていることは知っている。
そんな風に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。2017年、私がエンジニアに転職しようと考えたときにも全く同じ事を思っていました。
ITエンジニアのキャリアを考える上で、これらの企業タイプの違いを理解することは、将来を左右するとても重要な第一歩です。
特に、実務未経験からキャリアをスタートする場合、最初の環境選びがその後の成長曲線に大きく影響します。
そこでこの記事では、
- 自社開発・SIer・SESのビジネスモデルから働き方
- 年収・技術力・働きやすさなど、誰もが気になる5つの軸
- 憧れだけで終わらない、未経験から理想のキャリアを築くための「失敗しないキャリア戦略」
を解説しています。
この記事を読み終える頃には、あなたの中にあった漠然としたイメージが明確な知識に変わり、自信を持って企業選びを進められるようになっているはずです。
自社開発・SIer・SESの決定的な違い
まず、3つの業態を理解する上で最も重要な「根本的な違い」を3つの視点から見ていきましょう。この違いが、働き方や年収、求められるスキルなど、あらゆる面に影響します。
ビジネスモデルの違い|誰からお金をもらう仕組みか
企業がどうやって利益を得ているか。その仕組みを知ることが、業態理解の出発点です。
自社開発 — ユーザーから直接収益を得る
自社で企画・開発したWebサービスやソフトウェアをユーザーに提供し、利用料や広告費などから直接収益を得るのが自社開発企業です。
メルカリやSmartHR、freeeなどが代表例。自社プロダクトがヒットすれば会社の利益に直結し、逆にプロダクトが失敗すれば会社の存続に関わります。だからこそエンジニアには「売れるものを作る」という事業視点が求められます。
エンジニアの仕事が直接売上を生み出すため、技術投資に対する経営陣の理解も得やすい傾向があります。
SIer(受託開発) — クライアント企業から開発費を得る
SIer(System Integrator)は、クライアント企業から「こんなシステムを作ってほしい」という依頼を受け、システムの開発を請け負うことで収益を得ます。納品物である「システム」そのものが商品であり、受託開発とも呼ばれます。
NTTデータ、富士通、日立製作所などの大手SIerが代表格。銀行の基幹システムや官公庁のシステムなど、社会インフラを支える大規模プロジェクトを手がけることが多い業態です。
「納品して終わり」が基本のため、プロジェクト単位で売上が確定します。いかに効率よくプロジェクトを回すか、いかに多くの案件を受注できるかが企業の成長に直結する構造です。
SES(客先常駐) — クライアント企業に技術力を提供して対価を得る
SES(System Engineering Service)は、エンジニアの技術力をクライアント企業に提供し、その対価(労働時間)に対して収益を得る契約形態です。エンジニアはクライアントのオフィスに常駐し、開発チームの一員として業務にあたります。
SIerとの決定的な違いは、商品が「システム」ではなく「エンジニアの労働力」である点。極端に言えば、SES企業にとっては「エンジニアを何人、何ヶ月派遣できるか」が売上を決めます。エンジニアの稼働率(常駐先に出ている割合)が企業の業績を左右する仕組みです。
この構造を理解すると、なぜSES企業が未経験者を積極的に採用するのかが見えてきます。人を増やせば売上も増える。だからこそ未経験者にも門戸を開いています。
これらのビジネスモデルの違いが、実際の働き方にどう影響するか。次のセクションで見ていきましょう。
働き方の違い|どこで誰と働くか
働く場所やチーム構成も、業態によって大きく異なります。
自社開発 — 自社オフィスで、自社のメンバーと働く
基本的には自社オフィスで、同じ会社のプロダクトチームメンバー(デザイナーやマーケターなど)と一緒に働きます。チームの一体感が生まれやすく、コミュニケーションも活発な傾向にあります。
ある自社開発企業での1日はこんなイメージです。朝10時に出社(またはリモートでログイン)し、朝会でチームの進捗を共有。
午前中は昨日のコードレビューを消化し、午後はSlackでデザイナーと仕様を詰めながら新機能の実装に取り組む。夕方にはPdM(プロダクトマネージャー)とリリース計画について議論する。
コロナ以降、リモートワークの普及率は大幅に上がりました。フルリモートやハイブリッド勤務を導入する企業が増え、服装も自由なことが多い。働きやすさという点では最も恵まれた環境でしょう。
SIer — プロジェクトに応じて自社またはクライアント先で働く
プロジェクト単位でチームが組まれ、開発は自社オフィスで行うこともあれば、クライアント先に常駐することもあります。SESとの違いは、チーム単位でプロジェクトに参加する点です。
SIerでの1日は、プロジェクトのフェーズによって大きく変わります。要件定義フェーズならクライアントとの打ち合わせが中心。
開発フェーズなら設計書を元にコーディングとテスト。納品前は品質管理のためのレビューやドキュメント作成に追われることも。
大手SIerでは比較的ルールが整備されており、定時退社日を設けている企業も少なくありません。一方で、納期前の追い込み時期には残業が増える「波」があるのもSIerの特徴です。
SES — クライアント先のオフィスで、常駐先のメンバーと働く
勤務先は原則としてクライアントのオフィス(常駐先)。自社の社員は自分一人だけで、周りは常駐先の社員や他のSES企業のエンジニアという環境も珍しくありません。
SESエンジニアの1日は、常駐先のルールに完全に従います。出社時間、休憩時間、服装規定、すべてが常駐先の文化次第。
ある案件では私服OKでフレックス、別の案件ではスーツ必須で9時出社という具合に、案件が変わればガラッと環境が変わります。
自社への帰属意識を持ちにくいという側面がある一方で、様々な企業の開発文化を経験できるのはSESならではのメリットとも言えます。
働く環境がわかったところで、次はそれぞれの業態でエンジニアに何が求められるのかを見ていきます。
求められる役割の違い|何を作ってどう貢献するか
エンジニアとして何を求められ、どう事業に貢献するか。ここも業態ごとに異なります。
自社開発 — 自社サービスの成長に貢献する
単にコードを書くだけでなく、「どうすればサービスがもっと良くなるか」「ユーザーの課題を解決できるか」という視点が求められます。企画段階から関わり、リリース後の効果測定や改善まで一気通貫で担当することも珍しくありません。
新機能の提案、A/Bテストによる効果検証、ユーザーインタビューへの参加など、コーディング以外の業務も多くなります。「言われたものを作る」ではなく「何を作るべきか考える」ところから関わるため、事業への当事者意識が強く求められる環境です。
自社開発企業でのエンジニアの評価軸は「どれだけサービスの成長に貢献したか」。技術力だけでなく、ビジネスインパクトを生み出せるエンジニアが重宝されます。
SIer — クライアントの要求通りにシステムを完成させる
クライアントの要望を正確にヒアリングし、要件定義に基づいて期日通りにシステムを開発・納品する。それがSIerのミッションです。社会インフラなど、大規模でミッションクリティカルなシステムを担うことも多く、高い品質と責任感が求められます。
SIerでは、上流工程(要件定義・基本設計)を担当する人と、下流工程(詳細設計・実装・テスト)を担当する人に役割が分かれることが一般的。
大手SIerほど上流工程を担当し、実際のコーディングは下請けに任せる傾向があります。
評価の中心は「プロジェクトを成功させたか(納期・品質・予算)」。技術力だけでなく、クライアントとの折衝能力やプロジェクト管理能力が重視されるようになっていきます。
SES — 契約内容に基づいた技術を提供する
常駐先で、契約の範囲内の技術的な役割を果たし、プロジェクトの成功に貢献する。特定の技術領域のスペシャリストとして開発をサポートする立場です。
SESエンジニアの業務範囲は、契約内容によって明確に定められています。「Javaでのバックエンド開発」と契約されていれば、フロントエンド開発やインフラ構築は基本的に担当外。良くも悪くも、契約の枠内で働く形です。
評価は「常駐先からの評価」と「自社からの評価」の二軸で決まります。常駐先で高く評価されれば契約更新や単価アップにつながり、結果として自社での評価も上がるという構造です。
ここまでで3つの業態の根本的な違いが見えてきました。次のセクションでは、より具体的な5つの評価軸で比較していきます。
【徹底比較】自社開発・SIer・SESを5つの評価軸で比較
ここからは、「年収」「技術力」「働きやすさ」「入社難易度」「将来性」の5つで3業態を比較します。未経験からキャリアを考える上で、参考にしてください。
まずは全体像を一覧で把握しましょう。
評価軸 | 自社開発 | SIer | SES |
|---|---|---|---|
年収 | ★★★★☆(上限が高い) | ★★★★☆(安定性が高い) | ★★★☆☆(還元率次第) |
技術力 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
働きやすさ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
入社難易度 | ★☆☆☆☆(難しい) | ★★★☆☆ | ★★★★★(入りやすい) |
将来性 | 事業成長を牽引 | マネジメント系 | ファーストステップ or 専門家 |
各項目を詳しく見ていきましょう。
年収・給与相場|高収入を狙いやすいのはどこか
自社開発|★★★★☆(上限が高い)
企業の成長フェーズや収益性に大きく左右されます。メガベンチャーや有名サービスを持つ企業は高水準ですが、スタートアップでは低い場合も。
メルカリやサイバーエージェントなどのメガベンチャーでは、経験3〜5年のエンジニアで年収600〜800万円、シニアエンジニアなら1,000万円を超えることも珍しくありません。一方、シード期のスタートアップでは年収400万円台ということもあります。
ただしスタートアップでは、ストックオプション(SO)という形で報酬が支払われるケースがあります。会社がIPO(上場)すれば大きなリターンを得られる可能性も。リスクとリターンのバランスをどう考えるかがポイントです。
SIer|★★★★☆(安定性が高い)
大手SIerは給与水準が高く、福利厚生も充実している傾向にあります。年功序列の色合いが残る企業も多く、安定したキャリア形成がしやすいのが特徴です。
NTTデータや野村総合研究所(NRI)などの大手では、30代で年収800万円台から、企業によっては早々に1,000万円の大台に到達します。
管理職や高度専門職なら1,200〜1,500万円クラスも視野に入り、住宅手当や退職金制度も手厚い。トータルの待遇面では非常に恵まれた環境です。
ただし年功序列の傾向が強いため、若いうちは実力があっても給与が上がりにくい側面もあります。「安定性」と「短期での高収入」はトレードオフと考えておきましょう。
SES|★★★☆☆(還元率次第)
給与は所属企業の「還元率(クライアントからの報酬のうち、何割がエンジニアに支払われるか)」に大きく依存します。スキルを磨いて高単価な案件を獲得できれば年収は上がりますが、多重下請け構造の下層にいる企業では低くなりがちです。
SES業界の相場として、未経験〜1年目は年収280〜350万円程度、経験3年で400〜500万円程度が一般的です。
ただし還元率によって大きく変わり、還元率70%以上の優良SES企業なら同じスキルでも年収が50〜100万円高くなることもあります。
注意したいのが、IT業界特有の「多重下請け構造」。元請け→一次請け→二次請け→三次請け…と商流が深くなるほど、エンジニアの手取りは減っていきます。SES企業を選ぶ際は、還元率と商流の浅さを必ず確認してください。
技術力・スキルアップ|モダンな技術に触れられる環境か
自社開発|★★★★★
競争優位性を保つため、新しい技術やモダンな技術(React, TypeScript, Go, AWS/GCPなど)を積極的に取り入れる傾向があります。技術選定の裁量も大きく、サービスの成長に直結するスキルを磨ける環境です。
「このライブラリを導入したい」「アーキテクチャを刷新したい」といった提案がエンジニア主導で行われ、承認されれば実際に導入できる。技術的な挑戦が奨励される文化を持つ企業が多い。
勉強会やカンファレンスへの参加支援、書籍購入補助なども充実している企業が多く、技術力を伸ばしたい人にとっては理想的な環境でしょう。
SIer|★★★☆☆
金融機関や官公庁などの大規模システムでは、安定性や信頼性が重視されるため、枯れた技術(レガシーな技術)が使われることも少なくありません。Java、COBOL、Oracle Databaseなど「安定して動くことが証明されている技術」が好まれます。
一方で、大規模開発ならではの学びもあります。数十人〜数百人規模のチームで開発を進めるノウハウ、品質管理の手法、ドキュメンテーションの重要性。こうした大規模プロジェクト特有のスキルが身につきます。
最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを受けて、クラウドやアジャイル開発を取り入れるSIerも増えています。入社前に、その企業がどの技術領域に注力しているかを確認しておくとよいでしょう。
SES|★★★☆☆
良くも悪くも配属先を選べない、いわゆる案件ガチャの要素が強い業態です。最新技術を扱う現場もあれば、保守・運用やテストのみの案件もあります。
未経験からSESに入社した場合、最初はテスト業務やドキュメント作成など、コーディング以外の業務からスタートすることが多いです。そこで実績を積み、徐々に開発案件にアサインされていくのが一般的なステップ。
ただし自分で案件を選べないことが多く、「モダンな技術を学びたい」と思っていてもレガシーな保守案件に長期間アサインされるリスクがあります。営業担当との密なコミュニケーションで、キャリアの希望をしっかり伝えることが大切です。
働きやすさ・残業|ホワイト企業が多いのはどの業態か
自社開発|★★★★☆
フレックスタイム制やリモートワークを導入している企業が多く、働き方の自由度は高め。コアタイムなしのフルフレックスや、週5日フルリモートOKという企業も珍しくありません。
ただしサービスのリリース前や障害発生時は忙しくなります。本番環境で障害が起きれば、深夜や休日でも対応が求められることがある点は覚悟しておきましょう。
ベンチャー企業の場合、「働きやすさ」より「事業の成長」が優先されることもあります。企業のフェーズによって働き方が大きく変わる点は認識しておく必要があります。
SIer|★★★☆☆
プロジェクトの納期が絶対であるため、スケジュールが厳しければ残業が増えることも。「炎上案件」のリスクは常につきまといます。
一方で大手企業はコンプライアンス意識が高く、労務管理が徹底されている場合も多い。近年は「働き方改革」の影響で、月の残業時間に上限を設けている企業がほとんどです。
ただし「残業時間の上限」と「実態」が乖離しているケースもあります。面接では「繁忙期の働き方」「プロジェクトの平均残業時間」を具体的に確認しておきましょう。
SES|★★☆☆☆
働きやすさは、常駐先のクライアント企業の環境に完全に依存します。良い現場なら定時退社できますが、労働環境が悪い現場に当たるリスクも考慮が必要です。
さらに厄介なのが、「合わない現場でもすぐには抜けられない」こと。契約期間があるため、最低でも数ヶ月は我慢しなければならないケースが多く、「現場を変えたい」と申し出ても、次の案件がすぐ見つからなければ待機(自宅待機)になることもあります。
SES企業を選ぶ際は、「案件を断る権利があるか」「現場変更の希望を聞いてくれるか」を確認しておきましょう。
入社難易度|未経験から採用されやすいのはどこか
自社開発|★☆☆☆☆(難しい)
未経験者の採用は極めて稀。基本的には即戦力の経験者が求められるため、3業態の中で最も入社難易度が高いと言えます。
自社開発企業の採用では、ポートフォリオ(自分で作ったWebサービスやアプリ)が重視されます。「プログラミングスクールを卒業しました」だけでは、書類選考で落とされることがほとんどです。
未経験から自社開発企業を目指すなら、相当な準備が必要です。実際に動くサービスを複数開発し、GitHubで公開し、技術ブログで発信する。それくらいの努力が求められます。
SIer|★★★☆☆
新卒採用を積極的に行っており、研修制度が充実している企業が多いため、未経験者でもポテンシャル採用の可能性があります。第二新卒は特に狙い目です。
大手SIerの新卒採用では、文系出身でプログラミング未経験という人も珍しくありません。入社後に3〜6ヶ月の研修を経て現場に配属されるパターンが一般的です。
ただし中途採用(転職)の場合は、ある程度の経験が求められることが多い。未経験から大手SIerに転職するのはハードルが高く、まずは中小SIerやSESで経験を積むというステップを踏む人が多い状況です。
SES|★★★★★(入りやすい)
未経験者にとって最も門戸が広いのがSES。実務経験を積むことを目的に、キャリアの入り口として選ぶ人が多い業態です。
SES企業の採用では、「やる気」「コミュニケーション能力」「最低限のIT知識」があれば採用されることが多い。プログラミングスクールを卒業したばかりの人、独学で基礎を学んだ人でも十分にチャンスがあります。
ただし「入りやすい」ということは「人の入れ替わりも激しい」ということ。採用のハードルが低い分、離職率が高い企業も存在します。企業選びは慎重に行いましょう。
私がシード期のスタートアップに未経験エンジニア転職をしたのは2018年頃でした。1年近く仕事終わりにほぼ毎日コードを書き、GitHubに「草」を生やしていました。
この頃はスタートアップに限らず、あらゆる会社でエンジニアの採用人数がKPIとされ、「とにかく人を採れ」という時代だったと記憶しています。私が入社できたのはこのような状態も後押ししたと思われますが、今はAIがジュニアレベルの仕事を奪いつつあるため、未経験で自社開発企業に入社するのは当時よりも厳しい状況です。
将来性・キャリアパス|市場価値が高まる働き方は
自社開発 — 事業成長を牽引するキャリア
プロダクトマネージャー(PdM)やテックリードなど、プロダクトや組織の成長に深く関わるキャリアパスを描けます。
自社開発企業でキャリアを積むと、「事業を作れるエンジニア」「組織を率いるエンジニア」としての市場価値が高まります。CTO(最高技術責任者)を目指す場合も、起業する場合も、この経験は大きな武器になるでしょう。
また、自社開発企業間での転職はしやすい傾向があります。「〇〇というサービスを△△のポジションで成長させた」という実績は、他の自社開発企業からも高く評価されるからです。
SIer — マネジメント・コンサル系キャリア
大規模プロジェクトを管理するプロジェクトマネージャー(PM)や、クライアントの課題をITで解決するITコンサルタントなど、マネジメント層へのキャリアパスが一般的です。
SIerでは、年次が上がるにつれて「コードを書く」仕事から「人を管理する」仕事へシフトしていきます。「ずっとコードを書いていたい」という人にとっては、キャリアの方向性が合わなくなる可能性も。
一方、「ITを使ってビジネス課題を解決する」上流の仕事に興味がある人にとっては、最適な環境です。大手SIerで経験を積んだ後、コンサルティングファームへ転職するキャリアパスも珍しくありません。
SES — 技術の専門家 or キャリア形成のファーストステップ
特定の技術を極めるスペシャリストを目指す道、様々な現場経験を活かして自社開発企業やSIerへ転職するステップとして活用する道など、戦略次第で多様なキャリアを築けます。
SESでの経験を「ステップアップの起点」として活用する人は多く、1〜2年で実務経験を積み、その経験を武器に自社開発企業やSIerへ転職するパターンが代表的です。このルートを意識するなら、「どんな案件を経験するか」が成否を分けます。
一方、SESを続けながらフリーランスを目指す道もあります。様々な現場で人脈と実績を築き、独立するという流れです。フリーランスになれば、案件を自分で選べる自由と、より高い報酬を得られる可能性が広がります。
5つの評価軸からの比較は以上です。続いて、各業態のメリット・デメリットをさらに掘り下げていきます。
自社開発企業のメリット・デメリット|人気だが狭き門
エンジニア志望者に人気の自社開発企業ですが、魅力だけでなく知っておくべき現実もあります。
自社開発のメリット|サービスの成長に直結するやりがい
最大のメリットは、自分たちが作ったサービスが世に出て、ユーザーに使ってもらい、その反応をダイレクトに感じられること。ユーザーからの感謝の声や、サービスの成長が数字に表れた時の達成感は、他では味わえません。
たとえば、自分が実装した機能がリリースされた翌日、SNSで「この機能便利!」という投稿を見つけた時の喜びは格別です。A/Bテストで自分の仮説が正しかったと証明された時、DAU(日次アクティブユーザー)やコンバージョン率が改善した時など、数字で成果が見える瞬間も多くあります。
技術選定の自由度が高く、新しい技術を学びながらプロダクトを改善していける点も、自社開発ならではの魅力です。
自社開発のデメリット|教育体制が不十分で自走力が必須
多くの自社開発企業、特にスタートアップでは、手厚い教育体制が整っていないケースが少なくありません。OJTが基本で、自分で課題を見つけて学習し、アウトプットしていく自走力が強く求められます。
「分からないことがあったらいつでも聞いてね」と言われても、忙しそうな先輩に声をかけるのは気が引けるもの。
結局、自分で調べて解決するしかない場面が日常的に発生します。待ちの姿勢ではスキルアップが難しく、「教えてもらえる」ことを期待していると厳しいと感じるかもしれません。
「カリキュラムに沿って着実に学びたい」「手取り足取り教えてほしい」という人は、自社開発企業のカルチャーとミスマッチを起こしやすいタイプです。
自社開発に向いている人|プロダクト愛と高い学習意欲がある人
- その企業のサービスやプロダクトが本当に好きな人
- 誰かに指示されなくても、能動的に学習を進められる人
- 変化を楽しみ、チームで議論しながらプロダクトを良くしていくことに喜びを感じる人
SIer(受託開発)のメリット・デメリット|安定と多様な経験
社会のインフラを支える大規模なシステム開発に携われるSIer。魅力がある一方で、注意すべき点もあります。
SIerのメリット|大規模システム開発と充実した研修制度
SIerでは、金融、官公庁、製造業など、社会への影響力が大きい大規模システムの開発に携われます。数万人〜数百万人が利用するシステムの開発経験は、大きな自信と実績になるでしょう。
たとえば、銀行のATMシステム、年金の管理システム、航空会社の予約システムなど、「止まったら社会問題になる」レベルのシステムを手がけることも。こうしたミッションクリティカルなシステムの開発経験は、他では得られません。
大手SIerを中心に研修制度も充実しています。入社後3〜6ヶ月は座学研修、その後も定期的にスキルアップ研修が用意されるなど、体系的に学べる環境が整っています。
SIerのデメリット|技術選定の自由度が低くレガシーになりがち
クライアントの要望や既存システムとの兼ね合いから、使用する技術が限定されがちで、技術選定の自由度は低い傾向にあります。世の中のトレンドとは異なるレガシーな技術を使い続ける場面も少なくありません。
具体的には、「Javaの古いバージョンを使い続けている」「フレームワークが独自開発のもので汎用性がない」「クラウドが使えずオンプレミス環境のみ」といった状況です。こうした環境で数年働くと、市場で求められるモダンな技術スキルが身につかないリスクがあります。
ただし、「常に新しい技術に触れていたい」「モダンな開発環境で働きたい」という人は、案件によっては不満を感じるかもしれません。入社前に、その企業がどんな技術領域に注力しているかは必ず確認しましょう。
SIerに向いている人|チーム開発の基礎を固めたい安定志向の人
- 安定志向で、腰を据えて働きたい人
- 大規模なチーム開発の中で、基礎から着実にスキルを身につけたい人
- 将来的にプロジェクトマネージャーなど、管理職を目指したい人
SES(客先常駐)のメリット・デメリット|「やめとけ」の真実と活用法
「SESはやめとけ」とネット上で言われることもありますが、戦略的に活用する余地は十分あります。
SESのメリット|未経験でも実務経験を積みやすい入り口の広さ
SESの最大のメリットは、未経験者でもIT業界に入り、実務経験を積むチャンスが多いこと。ポテンシャル重視の採用を行う企業が多く、未経験からエンジニアキャリアを始めるなら、最も間口が広い選択肢です。
様々な企業の開発現場を経験できるのも魅力の一つ。大手企業、ベンチャー企業、異なる業界の現場など、短期間で多様な環境を見られます。「自分がどんな環境で働きたいか」を見極める上で、貴重な経験になるでしょう。
さらに、合わない現場に当たっても「契約期間が終われば次の現場に移れる」という気楽さがあります。正社員として入社した企業が合わなかった場合の転職と比べると、心理的なハードルはぐっと低くなります。
SESのデメリット|案件ガチャのリスクと帰属意識の希薄さ
最大のデメリットは、配属先を選べない案件ガチャのリスク。スキルアップにつながらない単純作業の案件や、労働環境が良くない現場に当たる可能性もあります。
近年は配属先を選択できる企業も増えている一方、依然として配属先を選べない企業も一定数存在する点には留意が必要です。
たとえば、「開発がしたくて入社したのに、テスト業務ばかり1年間続いた」「Excel管理や議事録作成など、エンジニアとは思えない業務をしている」といった声は珍しくありません。常に客先で働くため、自社への帰属意識が薄れやすい点も課題です。
「絶対にこの技術を学びたい」という強いこだわりがある人や、「安定した環境でじっくり働きたい」人は、SESの働き方に不満を感じやすいでしょう。SESを選ぶなら、「まずは経験を積む」という割り切りも大切です。
SESに向いている人|まずは現場経験を最優先で積みたい人
- 学歴や職歴に自信はないが、とにかく現場経験を積んでエンジニアになりたい人
- 様々な企業の文化や開発スタイルを短期間で見てみたい人
- コミュニケーション能力に自信があり、新しい環境に飛び込むのが好きな人
どれを選ぶべき?失敗しないキャリア戦略
3つの業態を比較してきましたが、「結局どれを選べばいいの?」と迷っている人も多いでしょう。
結論から言えば、最適な選択は「今のあなたの状況」によって変わります。まずは自分の現在地を客観的に把握するところから始めましょう。
「自社開発一択」は危険?自身のスキルレベルとの適性を見極める
未経験者の多くが「自社開発企業に入りたい」と憧れますが、「自社開発一択」という考え方は危険です。これまで見てきたように、自社開発企業は即戦力を求める傾向が強く、未経験者がいきなり入社するのはかなりハードルが高いのが現実です。
人気のある自社開発企業の求人には、1つのポジションに対して100〜300件以上の応募が集まることも珍しくありません。その中で未経験者が選ばれるには、「この人は投資する価値がある」と思わせる何かが必要です。
自分の現在地(スキルレベル)を客観的に把握し、現実的なステップを踏みましょう。
状況別アドバイス
- プログラミング学習を始めたばかり(〜3ヶ月)の人 — SESでまず実務経験を積むのが現実的
- ポートフォリオを複数作成済み、GitHub活動あり — 自社開発に挑戦する価値はあるが、SIerも併願を
- 異業種での社会人経験が3年以上ある人 — その経験を活かせる業界の自社開発企業を狙うのも一手
- 安定性を重視する人 — 大手SIerが最も条件の良い選択肢になり得る
SESを足がかりにする「わらしべ長者」戦略とは
未経験からエンジニアとしての市場価値を高めていく有効な戦略が、「わらしべ長者」戦略です。
- まずSES企業に入社する|未経験からでも実務経験を積める環境に飛び込む
- 1〜2年、現場でスキルを磨く|与えられた業務をこなすだけでなく、自主的に学習し、扱える技術の幅を広げる
- 経験を武器に、SIerや自社開発企業へ転職する|実務経験者として、より条件の良い企業、やりたいことができる企業を目指す
SESをキャリアの「ファーストステップ」として戦略的に活用すれば、理想のキャリアにぐっと近づけます。
この戦略を成功させるポイント
- 案件選びを妥協しない — 「開発経験が積める案件」を営業担当にしっかり伝え、テストや運用だけの案件は避ける
- 自主学習を怠らない — 業務時間外でもモダンな技術を学び、ポートフォリオを充実させる
- 転職のタイミングを逃さない — 1〜2年で「実務経験1年以上」の条件をクリアしたら、すぐに転職活動を始める
- 転職先を見据えた案件を選ぶ — 自社開発企業に転職したいなら、Web系の開発案件を優先的に選ぶ
企業タイプよりも「個社」の環境を見極める方法|面接での逆質問
最も大切なのは、「自社開発だから良い」「SESだから悪い」と業態だけで判断しないこと。優良なSES企業もあれば、労働環境が厳しい自社開発企業もあります。
企業のリアルな姿を見極めるには、面接での逆質問が有効です。
技術・開発に関する質問
- 「開発チームでは、どのような技術スタックを主に利用されていますか?また、技術選定はどのように行われていますか?」
- 「コードレビューの文化はありますか?1つのプルリクエストに対して、平均何人がレビューしますか?」
- 「デプロイの頻度はどのくらいですか?CI/CDは導入されていますか?」
- 「技術的負債の解消に、どのくらいの時間を割いていますか?」
教育・キャリアに関する質問
- 「未経験で入社された方は、最初の1年でどのような業務を担当されましたか?」
- 「入社後のオンボーディングはどのような流れですか?メンターはつきますか?」
- 「スキルアップのための支援制度(書籍購入補助、カンファレンス参加支援、資格取得支援など)について教えてください」
- 「エンジニアの評価制度はどのようになっていますか?何を基準に評価されますか?」
SES企業に特有の質問
- 「還元率はどのくらいですか?」(70%以上が優良の目安)
- 「案件を断る権利はありますか?希望を聞いてもらえますか?」
- 「待機期間が発生した場合、給与はどうなりますか?」
- 「自社での研修や勉強会はありますか?」
こうした質問を通じて、その企業がエンジニアの成長をどれだけ大切にしているかが見えてきます。回答が曖昧だったり、嫌な顔をされたりした場合は、その企業の体質を疑ったほうがよいかもしれません。
時々「自社開発以外は悪」のような意見を聞きますが、私は自社開発以外の選択肢も十分に検討すべきだと考えます。
まず前提として、私は社会不適合者で集団行動が苦手なため、客先常駐は難しいタイプです。この点を念頭に置いたうえでお読みください。
自社開発では、ほとんどの場合、事業ドメインが1つしかありません。多くても2つ程度でしょう。DeNAやDMMのように複数の事業ドメインを持つ会社は非常に少ないです。
自社開発ではこのように1つの事業ドメインとずっと向き合っていくことになるため、飽きが来ることや、知識の幅が広がらないこと、自分が楽しいと思えるドメインがわからないままキャリアを築いていくことになる可能性もあるでしょう。
一方で、受託開発では運用まで担当しないのであれば、1つの案件は早ければ1ヶ月〜3ヶ月で終わるものもあります。それだけ多くのドメインに触れられるのも、受託開発ならではの魅力だと考えています。
先述のとおり社不なので私は客先常駐は無理ですが、このように自社開発以外も検討することで、納得のいくキャリアを築けると考えています。
自社開発・SIer・SESを選ぶ際に良く相談される質問
未経験からIT業界を目指す方からは、「自社開発・SIer・SESの違い」や「どのキャリアを選ぶべきか」といった質問を非常に多くいただきます。ここでは、実際にエンジニア転職の相談を受ける中で頻繁に聞かれる疑問をFAQ形式でまとめました。これからIT業界を目指す方が、自分に合ったキャリアを考える際の参考にしてください。
Q1. 結局、自社開発・SIer・SESの一番の違いは何ですか?
一番の違いは「ビジネスモデル(誰からお金をもらうか)」と、それに応じた「提供価値(何を提供しているか)」の2点です。
- 自社開発は自社サービスを使ったユーザーから直接お金をもらい、自社のサービスを提供する
- SIerはシステム開発を依頼したクライアント企業からお金をもらい、システムの成果物を提出する
- SESはエンジニアの技術力を提供したクライアント企業からお金をもらい、労働力(開発リソース)を提供する
この根本的な違いが、働き方や求められるスキル、年収の構造など、あらゆる側面に影響を与えています。
Q2. 未経験からいきなり自社開発企業に入るのは本当に無理ですか?
結論から言うと、事業フェーズにより難易度が大きく変動します。多くの自社開発企業は即戦力を求めるため、実務経験のない未経験者の採用枠は非常に少ないのが現実です。しかし、ポテンシャルを重視する一部の企業や、長期インターンシップからの採用、高度なポートフォリオを評価されて入社するケースも存在します。ただし、一般的なキャリアパスとしては、SESやSIerで実務経験を積む、個人開発をしてサービスを運用するなど、ワンステップ挟んで目指す方が確実性が高いと言えるでしょう。
とくに創業間もないスタートアップでは未経験転職は難しく、逆にメガベンチャーと呼ばれるような大きな会社では比較的難易度が低下します。
Q3. SESは「やめとけ」と聞きますが、本当はどうなのでしょうか?
「やめとけ」と言われる理由は、案件ガチャ(配属先を選べないリスク)や多重下請け構造による給与の低さ、帰属意識の持ちにくさなどが原因です。これらは紛れもない事実として存在します。
しかし、未経験者が業界に入るための「入り口の広さ」は最大のメリットです。優良なSES企業を戦略的に選び、実務経験を積むための「足がかり」として活用すれば、その後のキャリアアップに非常に有効です。業態で一括りにせず、個別の企業を見極めることが重要です。
Q4. SIerでも客先常駐することはありますか?
はい、あります。ただし、SESの客先常駐とは少し意味合いが異なります。SIerの場合、自社のチーム単位でプロジェクトに参画し、クライアント先で開発を行うケースが多いです。一方、SESはエンジニア個人(もしくは少人数)がクライアントのチームに派遣されるのが一般的です。チームで動くか、個人で動くかが大きな違いと言えます。
Q5. 文系・プログラミング完全未経験でもエンジニアになれるのでしょうか?
なれます。実際に、多くの文系出身者や異業種出身者が未経験からエンジニアとして活躍しています。特に、研修制度が充実している大手SIerや、ポテンシャル採用を積極的に行うSES企業は、文系未経験者にとって有力な選択肢となります。大切なのは、これまでの経歴よりも「エンジニアになりたい」という強い意欲と、「なぜエンジニアになりたいか」の理由、そして自ら学習を続ける姿勢です。
Q6. 優良なSES企業を見分けるポイントは何ですか?
優良なSES企業を見分けるには、以下のポイントを確認しましょう。
- 還元率の公開有無 — エンジニアへの報酬配分が透明である証拠です(一般的に70%以上が目安)。
- 案件選択制度 — エンジニアのキャリアプランを尊重し、希望する案件を選べる制度があるか。
- 自社内での教育・研修制度の充実 — 待機期間中のスキルアップ支援など、エンジニアの成長をサポートする体制があるか。
- キャリア面談が定期的かつ丁寧か — 営業担当者がエンジニアの将来を親身に考えてくれているか。
面接の際には、これらの点を逆質問で確認することが非常に重要です。
Q7. 年収が一番高くなりやすいのはどの業態ですか?
一概には言えませんが、傾向としては以下のようになります。
- 上限の高さなら自社開発。メガベンチャーや急成長中のスタートアップでは、ストックオプションなども含めると最も高収入を狙える可能性があります。
- 安定した高収入なら大手SIer。給与テーブルがしっかりしており、福利厚生も手厚いため、安定して高い水準の年収を得やすい傾向にあります。
- スキルと交渉力次第ならSES。高単価な案件を獲得し、かつ還元率の高い企業に所属していれば、SIerを上回る年収を得ることも可能です。
まとめ|自分に合った企業タイプを選びエンジニアとしての第一歩を
今回は、未経験からエンジニアを目指す方に向けて、自社開発・SIer・SESという3つの企業タイプの違いを徹底的に解説しました。
最後に、3つの業態の特徴を一言でまとめておきます。
- 自社開発は技術力とやりがいは最高峰だが、未経験からの入社は最も難易度が高い。相応の準備と覚悟が必要。
- SIerは安定した環境と充実した研修で基礎を固められるが、技術の自由度は低め。マネジメント志向の人に向いている。
- SESは未経験から実務経験を積む最短ルート。件ガチャのリスクはあるが、戦略的に活用すればキャリアアップの足がかりになる。
どの業態が一番優れているということはありません。それぞれに異なるメリットとデメリットがあり、あなたのスキルレベル、価値観、そして将来のキャリアプランによって最適な選択は変わります。
憧れだけで「自社開発」を目指すのではなく、まずはSESで実務経験を積んでからステップアップするなど、戦略的なキャリアプランを立てることが成功への近道です。業態のイメージだけで判断せず、一社一社の企業文化や環境をしっかりと見極め、あなたにとって最も合った企業を選びましょう。